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「バランス」を東洋人が忘れている?

2010.05.25 (Tue)

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉は、決して、仕事と私生活を50:50にすることではありません。そのことは、僕が言うまでもなく、いろんな方が発言したり書いたりしています。しかし、語感としての「バランス」は「右と左のバランス」などに使われるように、(理想は)50:50的な解釈で使われています。

この「バランス」を「調和」と言うと、50:50的な感覚ではなく、もう少しお互いが入り交じった感覚で、スパッと2分割された語感ではないと思います。

もともと東洋においては、陰陽を表す太極図に見られるように、二極調和を考える場合でも、陰と陽の境を50:50的直線で示すのではなく、お互いに影響し合う相互作用関係として、曲線で捉えていました。

それがいつの間にか、「バランス」と捉えた時に、50:50という非現実的な解釈にすり替わっているのです。本来、東洋人が備えていたはずの感覚は、いつのまにか「ON or OFF」というようなデジタル信号的発想に変換されてしまっていて、それゆえに「ワーク・ライフ・バランスなど無理」という解釈になっているのかもしれません。

ワーク・ライフ・バランス自体は、英語圏でも決して50:50的解釈ではなく、当初は「家庭の不調は仕事にも悪影響を及ぼす」というメンタルヘルス分野から出発していました。つまり、お互いに深く影響し合うものとして「バランス」を使っていました。

ところが、日本に持ち込んだ時に、その「バランス」が固定的なモノとして解釈されてしまい、こんにちのワーク・ライフ・バランス概念の行き詰まりを生んでしまっています。

もはや「バランス」という言葉に相互作用のイメージを付与できないなら、言葉を言い換えて「ワーク・ライフ・シナジー」と言ってはどうか?という意見もあります(小室淑恵さんなどが提唱しています)。

ですが、東洋人はもともと素晴らしい「調和」に対するイメージをもっていたのです。「バランス」を「調和」と言い換えることで、もしも、相互作用的なイメージが導けるのであれば、僕は、「カタカナ語がキライ」として「ワーク・ライフ・バランス」を「仕事と生活の調和」と無理矢理訳させた小泉純一郎の功績もある意味大きかったと思います。もしも、彼がここまで読んで「バランス」を「調和」とさせたのなら、とても興味深いことです(そんな読みはなかったと思いますが…)。

英語的な解釈と日本語的な解釈とは、ときに大きくズレることがあります。
「テンションを上げて○○する」
は、今の日本語的には、「気持ちを鼓舞して」「気合いを入れて」という語感ですが、以前、英国人のアニルさんは「アカンアカン。テンション上げると持ってる力は100%出せへんで。リラックスして望むのがベストやん」というようなことを言っていました。

例えば、日本語でいう
「頑張って!」「頑張りや!」
と声かけするタイミングで、英語圏の人が「Relax!」と声かけしてる風景をよく見かけました。日本語で「リラックスしぃや!」というと「はぁ?これから勝負やチュ~のに?」になりますね。

「バランス」という言葉も、こんな感じでズレているのだと思います。だけど「バランス」の起源はもともと東洋思想だったのでは?という内容でした。
10:34  |  男の家事  |  Comment(2)

Comment

連投ですが

収まりの良い(かっこよさそうに見える)言葉で
新しい概念を広めようとする結果、本来の言葉の意味が
伝わらなくなる、祝詞化(形骸化)するということが、
世の中ではとても多いように感じます。

「バランス」を「調和」と訳すのも某国クビ長の「友愛」的な
感じで、自分的にはまだイマイチ響きにくい。
「シナジー」は逆引き辞書風には正解なんだけど、
一般にシナジーって言われてピンと来る人ってそんなに多くない。

ワークライフバランスの「バランス」にジャストミートな
日本語って「いいあんばいで」とか「ちょうどよく」とか
多分、きっとそんなゆるい感じなんだよね…。

まぁ、ワークライフバランスを推奨している人たちの多くが
バリッバリのビジネスキャリアばかりってところが
誤解を招く根本的な原因なのかも…という気もしなくは
ないんだけど…。
あべくん |  2010.05.25(火) 19:15 | URL |  【編集】

さすが!

うんうん。「いいあんばいで」とか「ちょうどよく」ね。

んじゃ、「ワーク・ライフ・バランス」は
「仕事と家庭生活のいいあんばい」
「ちょうどいい仕事と家庭生活の感じ」
という感じかな?

最後の
> まぁ、ワークライフバランスを推奨している人たちの多くが
> バリッバリのビジネスキャリアばかりってところが
> 誤解を招く根本的な原因なのかも…という気もしなくは
> ないんだけど…。

大いに言えると思います。
ワークもライフもユルユルでシアワセ~という人の話はあんまりでてきませんからねぇ。肩書きにスローライフ※※という名のついた多忙な人も居るくらいですし…(笑)
山田亮 |  2010.05.29(土) 19:17 | URL |  【編集】

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